2007年佐多達枝バレエ公演より

撮影:谷岡秀昌

■日 時
73日(木) 4日(金)
19 : 30(開演予定) 19 : 30(開演予定)

■会 場
シアター1010(センジュ)(北千住駅西口徒歩0分)

■チケット
A:6,000円(指定席) B:4,000円(自由席)
4月1日販売開始

■演出・振付 佐多達枝

■ダンサー
足川欽也 穴吹 淳 石井竜一 後藤和雄 坂本登喜彦 武石光嗣 登坂太頼
遠藤綾野 奥田麻衣 宇山たわ 斎藤隆子 澤井貴美子 島田衣子
関口淳子 高部尚子 樋田佳美 永橋あゆみ 堀口聖楽
※出演予定でした酒井はなは、都合により出演できなくなりました。
 訂正してここにお知らせします。

■「庭園」2006年初演時の評
吉田悠樹彦氏福田一平氏山野博大氏

『庭園』において生命の営みと時の流れを描き、
ベテラン作家ならではの洞察を示した成果に対して。

 時はただ流れ続け文明や人々の営みも歩き続ける。それは樹々がうっそうと茂る庭園での出来事。人々や蟲の営み、男女のドラマが淡々と綴られる中、時の流れが彼らの営みを包み込んでいく。植物の光合成を描きだした高部尚子、月光の中で羽化する昆虫を描いた足川欽也、関口淳子と後藤和雄による若き男女の日々、そして庭園でパラソルを広げいつになく華やぐ人々(島田衣子、斉藤隆子、澤井貴美子、柳瀬真澄、大関路佳、石井竜一、鈴木裕ほか)、といった1つ1つの情景が季節の流れと共に綴られた。舞台をつつみこむ植物の表情にも人体にも通じるエロティシズムを感じた。

 その『庭園』は果たして西欧のものだろうか、東洋のものだろうか。季節と共に変化を重ねていく幻想風景は21世紀初頭の東京の混迷する精神風景の中で、東洋的な時の流れと西欧近代の記憶をそれぞれ織り込んだ「ピクチャエスク」な情景であったのは事実だ。現代社会はグローバリゼーションと情報化の結果、社会の構造や倫理が大きく変動している最中にある。しかしこの作品に宿る静けさは印象的であり、それを可能にしたのはベテラン作家ならではの巧みと豊かな経験が可能にしたあまり語りすぎないことによる〈余白〉であったように思う。

 佐多達枝は旺盛な創作活動で知られる。作家は高田せい子、エリアナ・パブロヴァ、東勇作に師事、松尾明美・松山樹子が主催する公演に客演した。青年バレエグループでの活躍を経て74年に東京バレエセンターの設立に参加、その一方で自身のリサイタルを行い現代に至る。その最初の創作作品『水の反映』は19、20歳の頃の作品だ。江口博はその作品を当時の東京新聞に「新鮮な感覚の作品」と評した。それから1、2年後に本格的に振付家の道を歩みだすようになる。人間の情念と愛憎に迫る『パ・ドゥ・カトル』、カフカにモチーフをとった『父への手紙』など人間精神の深層に挑んだ作品が多い。本作では雄大な時空の流れと自然、そして生命の姿を強靱な洞察力から立ち上げた。

 佐多の作品世界を敬愛する踊り手たちは多い。この芸術家の作品が再演可能な状態にされることが望ましいという人は後を絶たない。また日本が誇る振付家として海外へと紹介される機会があることを願ってやまない。
(2006年度舞踊批評家協会賞パンフレット)

夢の庭園で鮮烈人間ドラマ

 戦後の日本バレエ界に、大江健三郎の「飼育」を発表して話題を呼んで以来、常に振付師として先駆的役割を果たしてきた佐多達枝が、「庭園」(河内連太台本)と題した、一時間半の大作で創作公演を行った。  人間誰の心にもある、庭に対する内なる願望や癒やし、恋愛、絶望などの営為の風景を、十三章にわたって描いて見せた。時には時間が止まり、未知の世界に迷い込むが、庭の緑が舞台いっぱいに広がって、生きる者に暗示を与え、人の思惟に生命を蘇らせていく。そこで踊られたバレエの印象的な三つの場面に、触れておくことにしたい。

 「埋葬」の景では、一心に男の墓穴を掘る一人の女性、男を埋めようとすると急に生き返り、また生前の二人に戻って踊るが、結局、女は男に殺されて埋葬される。ベンチに、失念の男の悄然とした姿が悲しい。

 また「ロマンチスト」の景では、女一人と男二人が若者の愛を踊るが、どうしても三角関係になってしまい、女を残して男たちは去ってしまう。そして次に出会った時、変わったのは男同士が愛を知っていて、今度は女が絶望して首を吊って死ぬ。緑の樹木も男たちも、何も言わずに見ている。

 終わり近くの「湖水」では、ごく身近な家族らしき人々。娘の夢見る絹のドレス、水面で遊ぶ渡り鳥、それぞれ皆の心に見えるものは違っていても、過ぎ行く時間を共有して生きようとする。

 どの景の振付も、機知とペーソスに富んでいて、客席を楽しませてくれた。作家・佐多の真骨頂を発揮した傑作と賞したい。見終わって、人間はどんな夢の庭園を造っても、結局、それを壊してゆくのも人間なのだとーそんな感慨が残った。
(2006年10月11日 東京新聞夕刊)

人間ドラマ脈絡なく進行する

 佐多達枝が今年はメルパルク・ホールで新作『庭園』による二日間の公演を行った。昨年俳優座で『dogs』三日間、一昨年の世田谷パブリック・シアターでの『beach ナギサカラ』二日間と着実にペースを維持した彼女の最近の創作活動には、年齢的な衰えなど少しも感じられない。

 こんどの『庭園』は十三景により構成された大作だ。演出・振付が佐多達枝、台本が河内連太、照明が足立恒という不動のスタッフが顔をそろえての上演。舞台には緑したたる穏やかな午後の情景がいっぱいに広がっている。そこを出演者総勢十八名が次々と横切って行く。たっぷりと時間をかけて、その列をしだいに複雑なダンスのフォーメションに仕上げて行く佐多の序盤の進めぐあいは、大きなスケールを感じさせるものだった。

 次は一転して高部尚子のソロ『光合成』となる。舞台に垂れ下がる木々の緑を照明が光と影の縞模様で揺り動かすと、たくさんの葉の一枚々々がいっせいにきらめきはじめる。その中で高部の小柄なからだが、あふれる命の営みに反応するかのように伸びやかに踊りだす。

 庭園には、日傘をさした女たちが行き交い(日傘と水やり=柳瀬真澄他)、夜になると満月が樹木に影を与え(満月=足川欽也)、時雨がさっと通り過ぎる(関口淳子、後藤和雄他)。また地面では虫たちの営みもひそやかに進む(啓蟄一=穴吹淳、登坂太頼他、啓蟄二=石井竜一、後藤和雄)。

 庭園では時に事件も起る。佐多は自然を風景写真のようにたんたんと見せているだけではない。ここは都会の一角を占める庭園であり、人間のドラマが脈絡なく進行する現場なのだ。そのような思いがけない逆転現象は、昨年の『dogs』一昨年の『beach』などで見られた。彼女の振付は、人間の愚行のすべてを許すかのようにゆったりと果てしがない。大きな感動がじわりと押し寄せた佳作だった。
(2006年10月20日 週刊オン★ステージ新聞)


■日時、演目
55日(祝月)14時30分/18時30分開演(2回公演、開場は30分前)
ボロディン「韃靼人の踊り」, バッハ「カンタータ」, ブラームス「ジプシーの歌」

■場 所
きゅりあん小ホール(大井町駅前)

■チケット
3,000円(前売り券) 3,500円(当日券)全席自由席

■演出・振付 佐多達枝

■指 揮 青木洋也

■ダンサー 斉藤隆子

■独 唱 昆野智佳子 青木洋也 長尾譲 浦野智行

■コロス オルフ祝祭合唱団

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